遺伝性血管性浮腫(HAE:Hereditary angioedema、以下HAE)は、遺伝子の変異が原因で血液中のC1-インヒビター(別名:C1-インアクチベーター)の低下もしくは機能異常を起こす病気です。国の指定難病「原発性免疫不全症候群」の疾患の一つに認定されています。皮膚や腹部(腸)など、身体中のあらゆる箇所に繰り返し腫れが起こり、喉が腫れると気道をふさいで呼吸困難に陥り、命に関わる場合もあります。
日本においては、CSL830と同一有効成分を有する静注用製剤(販売名ベリナートP静注用500)が、1990年にHAEの急性発作の治療を適応として、さらに2017年には侵襲を伴う処置によるHAEの急性発作の発症抑制を追加適応として承認されており、販売されています。CSL830はこのようなHAEの症状の急性発作の発症抑制を目的として開発されました。2020年8月17日にCSL830は「遺伝性血管性浮腫の発作の発症抑制」を予定される効能又は効果として、希少疾病用医薬品に指定されました。
臨床試験について
CSL830の日本での製造販売承認申請は、海外第Ⅲ相臨床試験であるCOMPACT (Clinical Study for Optimal Management of Preventing Angioedema with low-volume subcutaneous C1-inhibitor replacement Therapy)試験 1)、COMPACT長期投与試験 (Open-label Extension)2) 及び国内第Ⅲ相臨床試験でのCSL830の有効性と安全性を検証した結果等に基づいて行われています。
HAE1型又は2型の患者90例を対象とした多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験であるCOMPACT試験(40国際単位[IU]/kg又は60 IU/kg又はプラセボを週2回16週間皮下投与)において、主要評価項目である期間で調整したHAE発作頻度の最小二乗平均(標準誤差)は、プラセボ投与の4.03(0.263)回/月から本剤60 IU/kg投与で0.52(0.261)回/月に減少し、その差は統計的に有意でした(p<0.001)。HAE発作の1か月あたり平均発生回数は、プラセボ群と比較して60IU/Kg投与群で95.1%(中央値)、40 IU/kg で88.6%(中央値)低下しました。
また、副次評価項目の1つである期間で調整したHAEの急性発作の治療薬の使用頻度の最小二乗平均は、60 IU/kg投与でプラセボ投与の3.89回/月から0.32回/月に減少し、40 IU/kg投与でプラセボ投与の5.55回/月から1.13回/月に減少しました。
因果関係のある有害事象は、本剤投与期において86例中29例(33.7%)に発現し、プラセボ投与期において86例中22例(25.6%)に発現しました。本剤投与における主な因果関係のある有害事象は、注射部位紅斑(17.4%)、注射部位疼痛(16.3%)、注射部位硬結(8.1%)、注射部位内出血(5.8%)、注射部位腫脹(5.8%)並びに注射部位浮腫(5.8%)でした。国内第Ⅲ相試験においてもCOMPACT試験とほぼ同様の結果が得られています。
CSLベーリングはこれまで40年近くにわたり、世界各国で、HAEコミュニティへの継続的な支援に取り組んでまいりました。今後もHAEの患者さんやご家族の声に耳を傾け、アンメットニーズに貢献するイノベーションを促進し続けるとともに、希少・難治性疾患の患者さんの生活の質の向上や、患者さんに対する理解の広がりに貢献することを目指してまいります。
【CSLベーリング株式会社(日本法人)について】
CSLベーリング株式会社は、生物学的製剤のグローバル企業であるCSLベーリング(本社アメリカ)の日本法人です。免疫・希少疾患領域、救命救急・止血領域、及び血友病領域を主要領域としています。
2016年には血友病領域に参入し、遺伝子組換え血友病B治療薬を上市しました。血友病領域では、さらに、2017年12月に遺伝子組換え血友病A治療薬を発売しました。
2017年9月には、ビタミンK拮抗薬療法時の出血傾向を抑制する、静注用人プロトロンビン複合体製剤を発売しました。
2019年3月には20%皮下注用人免疫グロブリン製剤が、「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を効能又は効果として、適応追加の承認を取得しました。2019年3月に10%液状静注用人免疫グロブリン製剤が、「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善」と「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を効能又は効果として製造販売承認を取得し、2020年2月には無又は低ガンマグロブリン血症の適応追加も承認されました。
日本において生物学的製剤を専門とする企業として設立以来歩みを重ね、2020年で20周年を迎えました。CSLベーリングは、今後とも日本の医療に、ひいては患者さんやご家族の生活の質の更なる向上に貢献してまいります。
https://www.cslbehring.co.jp
《患者さん・一般向け情報サイト》
E-免疫.com:http://csl-info.com/e-meneki/
CIDPマイライフ:https://csl-info.com/cidp_pt/
HAE情報センター:https://csl-info.com/hae-info/
ヘモフィリアナビゲーター:https://csl-info.com/hemophilia-navi/
血友病B患者さん向けウェブサイト:https://csl-info.com/dowhatyouwant/
CSLベーリングは、2021年に設立された遺伝性血管性浮腫の早期診断実現を目指すコンソーシアム、一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(Diagnostic Consortium to Advance the Ecosystem for Hereditary Angioedema 略称:DISCOVERY)に参加しています。
DISCOVERYウェブサイト:https://discovery0208.or.jp/
1) Prevention of hereditary angioedema attacks with a subcutaneous C1 inhibitor. Longhurst H, et al. N Eng J Med. 2017;376:1131-1140.
2) Long-Term Outcomes with Subcutaneous C1-Inhibitor Replacement Therapy for Prevention of Hereditary Angioedema Attacks. Craig et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 7(6):1793–1802.
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